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牌効率のループ現象(トイツ場概論6)

 アンコ(コーツ)系牌効率のベース役には「四暗刻」の他に「対々和」があります。この2つの役の形は同じです。しかし3枚一組になった牌がもたらす影響は、他家の目に触れるか触れないかによって異なる部分もあります。一卵性双生児の性格構造においてほとんど常に一致している構造部分から、かなりの不一致を示す構造部分まであるのとよく似ています。そう、「四暗刻」と「対々和」は麻雀界の一卵性双生児なのです。

 まずはこの2つの役を比較検討してみましょう。役としての形は同じですので、そこへ向かうのに係わる意志度やその根拠とするものは同じになるはずです。違うのは何和了を目的とするのかでしょうか。「四暗刻」ではツモ和了目的でしたが、「対々和」の場合出和了・ツモ和了の別を問いません。さてどちらが「アンコ(コーツ)系牌効率」の本質なのでしょう?

 どうしても高得点が必要なときなどは四暗刻狙いとなり、ツモ和了目的の場面もあるかもしれません。しかしそれはレアケースで、多くはその前に鳴いて形を作りにかかるでしょうから、やはり「対々和」の「出和了・ツモ和了問わず」がその本質なのではなかと思われます。

 するとやはりこの分野においても、次のように牌効率のループ現象が起こるのです。

【シュンツ系】 【一般的牌効率】 【トイツ系】 【アンコ系】
出和了目的 単純和了目的 ツモ和了重視 単純和了目的


 さらに「対々和」の要素である「ポン」について思いを巡らせると、牌効率の新たな姿が見えてきます。これはされた側の立場で考えると良くわかります。「ポン」があった場合、まず「一色手」や「対々和」が疑われます。また「先付け」の可能性や、その鳴かれた牌が老頭牌なら「チャンタ」の可能性もあります。そのため字牌が切りづらくなります。また「ポン」されたのが数牌なら、その周辺での面子化が難しくなります。そこでの面子化を見切り、数牌を切り出すこともあるでしょう。つまり「ポン」には他家の打牌を操作する力があるということです。

「他家操作度」という分野から牌効率を見直すと、「シュンツ系牌効率」は迷彩という点から分かるように、他家操作が高いです。それに対して「一般的牌効率」は他家よりも自分に集中する感じです。「トイツ系牌効率」は字牌の扱いや筋牌の扱いで結果的に他家の和了を遅らせることになります。そこで、それぞれを数値化するとこのようになるのではと考えられます。

【シュンツ系】 【一般的牌効率】 【トイツ系】 【アンコ系】
他家操作度70 他家操作度10 他家操作度30 他家操作度90

なんとこの分野においても、牌効率のループ現象が起こっているのです。

 また「ポン」の他家操作という面を考えると、新たな戦略(戦術?)が浮かんできます。他家の和了を阻害することが目的の第一である鳴きです。特に数牌の「ポン」にはこの要素が多く含まれるでしょう。つまりアンコ(コーツ)系牌効率のベース役である「対々和」には、意識するしないに関わらず他家操作・和了阻害の要素があるのですが、もしかするとその役の本質は自分の和了ではなく、他家の妨害にあるのかもしれません。

 アンコ(コーツ)場は未開の地であり、アンコ(コーツ)系牌効率についての記述は唯一「土田氏」の文献にわずかに残るのみと以前書きました。しかしアンコ(コーツ)系牌効率の本質が自分の和了ではなく他家の妨害にあるのだとすると、それは安藤満氏による亜空間殺法にそのヒントがあるのかもしれません。「アンコ(コーツ)系牌効率」が「亜空間殺法」に関係しているとするならば、その鍵は「諦めの心」かもしれません。

 安藤満氏は「秘伝・亜空間殺法」P150において、「亜空間殺法を使うときは、まず「諦め」から入るのである。その半荘を捨て、私欲を捨てなければ、技は決まらないと肝に銘じておくべし。」とおっしゃっています。「アンコ(コーツ)系牌効率」のベース役「対々和」が、自分の和了ではなく他家の妨害を本質とするならば、その心のありようは共通するようです。

 また「自分の和了の優先度」について、それぞれの牌効率を考えてみるとどうなるでしょう。「シュンツ系牌効率」では自分が和了るというよりも、他家に振り込ませることで精神的ダメージを与えることが第一目的のようです。逆に自分がダメージを受けないよう、攻撃力を落としても手牌をスリムにする傾向があります。

「一般的牌効率」ではご存知のとおり、自分が和了ることが第一目的です。和了りに向かって積極的に進んで行きます。「トイツ系牌効率」では自ら積極的に和了りにかけるというより、和了れればラッキー程度の心持ちです。むしろその局を静観する感覚でしょう。「アンコ(コーツ)系牌効率」では上記のように自分の和了は二の次で、他家の和了をつぶすことが第一目的になります。

 そこで各牌効率を数値化するとこのようになるのではと考えられます。

【シュンツ系】 【一般的牌効率】 【トイツ系】 【アンコ系】
和了優先度70 和了優先度90 和了優先度30 和了優先度10

 なんとこの分野においても、牌効率のループ現象が起こっているのです。

まとめますと
【シュンツ系牌効率】 【一般的牌効率】 【トイツ系牌効率】 【アンコ系牌効率】
三色・一通・チャンタ タンヤオ・役牌 七対子(チートイツ) 対々和
意志度70
自分の捨牌
出和了目的
他家操作度70
和了優先度70
意志度10
自分の手牌
単純和了目的
他家操作度10
和了優先度90
意志度30
他家の捨て牌
ツモ和了重視
他家操作度30
和了優先度30
意志度90
自分の手牌
単純和了目的
他家操作度90
和了優先度10
となります。

つまり牌効率はループしているというのが私の結論です。


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